
子ども教室ホサナ セラピスト
石尾千晴
応用行動分析技術者(ABAT)
認定ABAセラピスト
ABA療育支援員(NPO法人つみきの会)
理学療法士
保育士
ごあいさつ
「あなたのお子さんには障害があります。でも、ゆっくりですが成長します」そういわれて、安心できる親はいないでしょう。私はその1人でした。不安ながらも、必死にわが子によりよい育ちを、と思って試行錯誤してきました。
子どもの見せる様子を、障害と結び付けて悲観したこともあります。
ABAの考え方による不適切行動への介入は、子どもの行動が障害のゆえに仕方がないのだという落ち込んだ気持ちを変えてくれました。
小さな変化は希望となりました。
できることが増え、絵カードで伝えてくれる意思表示・話す言葉が増える日々は純粋に嬉しく、親としての効力感を得ることができました。
しかし、ABAの考え方による療育は魔法のように即効性があるわけでもありません。
地道に、コツコツと日々つみあげていくものだと思います。
家族や通園先に理解してもらって、統一した対応や環境を作っていく必要も多々あります。
わが子が新しいスキルを獲得することが、どんなに大変なことなのかを目の当たりにし、障害とはなにかを重く受け止めることもあります。
それでも、やっぱりABAの考え方に出会ってよかったと心から思います。
そんな体験を、一組でも多くの親子にしてもらいたいと願います。
私たちはあきらめません。
行動は変えられるのです。

私の体験
― 問題行動が
変わる時
私が自身の子どもで体験した問題行動改善の一例についてご紹介します。
息子は、食事にあまり興味がありませんでした。
家庭での食事のたびに、遊びをやめることを嫌がり、唸って怒る日々でした。もう食事に誘うのをやめ、食べなくてもよいとしていましたが、それでも食卓に食事が並ぶと、やってきて怒っていました。
特に朝は時間との闘いで、散々怒ったあげくに食事を食べる息子を、今度は出かけさせるのに必死でした。
毎日うんざりでした。
正直を言えば、”障害をもつ子どもの子育ては辛い”そんな気持ちになる時間もありました。
そんな状態に対して、ABAのスーパーバイザーは、問題行動の機能は複数あるといいました。
1つは、逃避。
つまり、遊びをやめて食卓につくことを回避するための行動。
2つ目は、注目。
この問題行動を起こすことで、親の注目を得ている。
私たちは、指導に従い、いくつもの工夫を重ねました。
すべてを1度にやったわけではありません。その一部をご紹介します。
食事の後に、本人の好きな活動をスケジュールに入れる。
問題行動を起こしても、親が注目しない。
食事時間がくることを、見通しを持って認識できるようにタイマーを使用する。
食事の開始を待ってほしい「待ってて」の表現を教える。
食事を自分で運びたい「僕がやる」という表現を教える。
問題行動以外の望ましい行動にたくさんの注意を向ける。
取り組みについては、家族にも協力をお願いしました。
結果、食事については、わずか2週間後にほとんどこの問題行動が消失しました。
そして「待ってて」「僕がやる」などを表現する力は、他の場面にも応用され別の問題行動を減らすことにも役立ちました。
今でも、新たな問題行動が出てくることはあります。
しかし、こうして計画、対応していくことで、行動が変わるのだということを実感できたことで、私の気持ちは大きく変わりました。
問題行動が起きるたびに、ではどんな環境を整えるか。足りないものは何か。私たちの対応は適切か。息子は行動を通して、私に新たな問いをしてくるのです。それに、私は日々答えています。